ぱり疲れはてたものと見える。風に、長マントがまくれる。黒頭巾《くろずきん》が、ひとりでこっくりこっくりとおじぎをしているが、これも風のいたずららしい。
附近の建築物の屋上にも、警官隊がぎっしりとのぼって、もし怪魔がこっちへ逃げてきたときは取りおさえようと、手ぐすねひいている。
そのうちに怪魔は気がついたらしく、塔《とう》の尖端《せんたん》に立ちあがって、きょろきょろと下をながめまわした。と、思ったら、怪魔はマントの下から、石のようなものを下へばらばらとまいた。それは下にせまっている警官隊のまん中で大きな音をあげて破裂《はれつ》した。警官たちは将棋《しょうぎ》だおしになった。
「うてッ」
警官たちも今はこれまでと、下から銃器《じゅうき》でもって応じた。上と下とのはげしいうちあいはしばらくつづいた。警官たちは、どんどん新手《あらて》をくりだして、怪魔を攻《せ》めたてた。
怪魔はついにふらふらしだした。
「あ、あぶない」
怪魔のからだが塔の上からすっとはなれた。
「下へ飛ぶぞ。逃がすな」
大きく弧《こ》をえがいて、長い黒マントの怪魔は議事堂の庭の上に落ちた。そして動かなくなった。
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