リのように空中をとびまわるかもしれないね」
「えっ、なんですって」
「いや、なんでもないよ」
 蜂矢は、あとをいわなかった。それはじぶんの想像のために、小杉少年を不必要にこわがらせてもいけないと思ったからである。だが蜂矢の想像としては、もしもこの茶釜が、針目博士の作り出した金属Qであったとしたら、たとえそれが今は破片になっているにせよ、いつかは生きかえって、破片ながら動き出すかもしれないと思ったのであった。
 はたして、蜂矢探偵のこの予想は的中するかどうか。


   ふしぎな電話


 きゅうにある家出人事件《いえでにんじけん》がおきて、そのことについて蜂矢探偵は一生けんめいに走りまわっていたので、れいの茶釜破壊の日から約二十日間を、怪金属事件の捜査から、手をぬいていたのだった。
 ようやくその家出人も、ついに探しあてられて、ぶじ家にもどり、蜂矢の仕事も、ここに一段落となった。そこでかれは、ふたたび怪金属事件の方へあたまをふりむけることになった。
 この二十日間、さいわいべつに怪しい事件も起こらず、まず泰平《たいへい》であった。
 しかしいろいろなことが、あしぶみをしていた。針目博士
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