られて、本所《ほんじょ》の百善病院《ひゃくぜんびょういん》へつれて行かれました。ぼくはそれを見おくって、そこを引きあげたんです。これがすべてのお話です。」
「そうかい。よくわかった」
蜂矢探偵は、少年の労《ろう》をねぎらったのち、ふと思い出したかのように、
「あれはどうしたろうか。問題の文福茶釜の破片はどうしたろう」
「ああ、それはですね。ひとつだけぼくが拾ってきましたよ。いま持ってきます。」
二郎は玄関へ行ったが、まもなく風呂敷包を持って引き返してきた。
「場内でひろったんですが、たしかにこれは二十世紀文福茶釜の破片の一つです。よく見てください」
「これが、そうなのかい」
蜂矢は、その破片を手にとって、いくども裏表をひっくりかえして見いった。この破片は、釜のごく一部分であるが、釜のつば[#「つば」に傍点]もついていた。
「このほかに、茶釜の破片は落ちてなかったんだろうか」
「さあ。落ちていたかもしれませんが、ぼくの目にとまったのは、これだけでした」
「そうかい。とにかくこれはいいものを拾って来てくれた。これは、ぼくのところに保管しておくが、ひょっとすると今夜あたり、これがコウモ
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