の行方の捜査のこと。黒箱の中にはいっていた器械をしらべること。こわれた茶釜の行方をつきとめ、その破片をみんな集めることなどが、きゅうを要することだった。
茶釜の破片あつめは、いまとなってはどうにも手おくれで、いたしかたがなかった。あの事件の直後、小屋の中をめんみつに探したなら、破片あつめはあるていど、成功したかもしれないのだがいまとなって後悔《こうかい》しても、もうおそかった。
けっきょく、ちゃんとはっきりのこっているのは、小杉二郎少年が拾ってきて、いま蜂矢の書斎の金庫の中にある一破片だけであった。この破片は、もしや奇怪なる生き返りでもして、家の中をコウモリのように飛びまわりはしないかと、気をもませたものであったが、事実そういうことは起こらなかった。まったくしずかに箱の中にはいっているふつうの金属片にすぎなかった。蜂矢は、はじめはこれが飛びまわるかと、おそれをなしたものの、飛びまわらないとわかったいまは、少々がっかりしているふうであった。
雨谷君も、まず正気《しょうき》にかえって、いまではふつうの人のようになり、退院も間ぢかという話であった。この雨谷君に茶釜の破片を持っているなら
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