いると、お三根が寝床《ねどこ》から起きあがった。水を飲みに行くつもりか、かわや[#「かわや」に傍点]へ用があったのか、とにかく起きあがったところへ、Qがとんでいってお三根ののど[#「のど」に傍点]にさわった。Qのからだはかみそり[#「かみそり」に傍点]の刃《は》のようにするどいので、お三根ののど[#「のど」に傍点]にふれると、さっと頸動脈《けいどうみゃく》を切ってしまったのだ。思いがけなく、Qは人間の死ぬところを見て興奮した。そして、朱《あけ》にそまって死んでいくお三根のまわりを、なおもとびまわったので、お三根のからだのほうぼうを傷つけた。どうだ。わかるかね」
「よくわかります。それだけよくごぞんじだったのに、あなたはなぜはじめに、そのことをわれわれに説明してくださらなかったのですか」
「おお……」
 と、博士はうめいた。
「これは最近になって、わしがつけた結論なんだ。事件当時には、わしもあわてていて、なにも判定することができなかったんだ」
 博士の話は、なかなか鋭いところをついていた。思いがけない殺人に、みずから興奮してあわてたQは、お三根の部屋でうろうろしているうちに、すっかり疲れてふとん[#「ふとん」に傍点]のすそに眠ってしまったところを、川内警部がぎゅうと踏みつけたので、Qはおどろいて目をさまし、とびあがった。そのときかみそりのように鋭いQが、警部の左の足首にさわったので、さっと斬ってしまったのだ。
 Qはいよいよおどろき、戸口から廊下へとび出し、もとの研究室へひきかえした。そのとき田口警官が、廊下をこっちへやってくるのとすれちがった。すれちがうとたんに、Qは田口の右ほおにさわって斬ってしまった。
 そこでQはますますあわて、その建物から外へとびだした。そうして人に拾われるようなことになったのだ。
 と、博士は見ていたように、話をしたのである。
 その話の間に、約束の時間は過ぎてしまった。だが博士は、それに気がつかないのか、しゃべりつづけた。興奮の色さえ見せて、かたりつづけたのであった。


   大団円


「おどろきました、感じいりました」
 と、長戸検事は厳粛《げんしゅく》な顔になっていった。
「あなたはどうしてそこまで、おわかりになったのでしょう。Qをお作りになったのは、あなたであるにしても、Qの行動をそこまでくわしく知る方法とか器械があるのでしょう
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