と、一はしをダビットにわたした。わたされた方は、それを胴中《どうなか》に結びつけると、うしろへ下って椰子《やし》の木にだきついた。カメラはそばの雑草の上へそっとおいた。
「オー、ケー」
ダビット技師が、うなずいていった。
「よし、分った」ケンはロープを巻いたやつを軽くふりまわしはじめた。
「おーい、隊長。今いくよ」
伯爵が上をむいた。そこへロープは、ぴゅーっとでていった。ケンが右腕をすばやく引く。するとロープのはしの輪が、うまく伯爵の上半身をとらえた。
「あげるよ」
ケンは下へ、そういってから、うしろのダビットへ合図をする。
そこで二人は、呼吸を合わせてロープをたぐった。玉太郎もうしろへまわって、ロープのはしをにぎった。
やがて伯爵隊長の帽子が見え、それからふとったからだが現われた。
「やれやれ、助かった。どうもありがとう」
伯爵は、地面に膝をつき、胸をおさえた。彼の背中で、自動銃がゆれた。
一息いれるために、ケンとダビットは煙草に火をつけた。伯爵にもすすめたが、彼はそれをことわって、腰にさげていた水筒《すいとう》から少しばかり液体をコップの形をしたふたにとって、口の中へ
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