は玉太郎のからだにしっかりとしばりつけてあった。
 ようやく三人は崖の上にのぼりついた。
 ポチがほえた。
 崖のとちゅうで、はあはあと息を切っていた伯爵が、はっと体をふせた。またもや恐竜が現われたとかんちがいしたらしい。
「犬ははなしたがいいよ、危険を予知することができるからそうしたまえ」
 監督ケンが、玉太郎にいった。
 玉太郎も、それはそうだと気がついたので、ポチの首から綱をはずした。ポチはよろこんで、そこら中を嗅《か》ぎながら走りまわる。
 しかし、恐竜の首がひこんだ林の奥は、しいんと、しずまりかえっていた。


   恐竜の気持


「さあ、出かけましょうか」
 玉太郎は、二人の映画班の方へ声をかけた。
「いや、ちょっとまった。隊長が、まだ崖をのぼり切っていないから……」
 監督ケンは、そういって、崖のところへ出て、下をのぞきこんだ。
「おーい、隊長。ロープでも下ろしてやろうかね」
 ケンは、がむしゃらのようでいて、細心《さいしん》であり、親切であった。
 下では、伯爵が何かいったが、玉太郎には聞きとれなかった。
「ダビット。手をかせ」
 ケンは、腰につけていたロープをほどく
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