このとき発言した。
「うん。それは考えないでもなかったが、ちょっとは、できないね」
 と、監督ケンが、今までのいきおいににず、尻ごみをする。
「わしは、一たん、うしろへ下って、すこしじゅんびをした上で、恐竜へむかうのがいいと思うね」
 これは伯爵隊長のことばだ。
「そうですか。それではぼくひとりで、崖の上へ行ってみましょう。みなさん、ここで待っていて下さい」
 玉太郎はポチの頭をなでながら、そういった。
「そりゃ冒険だ。君ひとりで行くのはよろしくない」
 ケンとダビットが、このとき顔を見合わせて何かいっていたが、話がきまったと見え、
「よろしい。玉太郎君にさんせい。ぼくたち二人も、君といっしょに崖をのぼるよ。なにしろ百万ドルの賞金をつかむためには、ぐずぐずしていられないからね」
 映画斑の二人が玉太郎と共に、崖上へ行くことを承知したので、残る伯爵隊長もお尻がむずむずしてきた。いっしょに行きたくもあるし、危険で行きたくなくもある。
 だが、玉太郎と二人のアメリカ人が崖をのぼりだすと、セキストン伯爵も、一番最後から崖へ手をかけてのぼりはじめた。
 ポチは、首玉に綱がむすびつけられ、綱のはし
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