ケン。なにしろ、おれは恐竜のあまりでっかいのにびっくりして、レンズのふたを取るのを忘れてしまったんだ。これからは、こんな失敗はくりかえさない。しかし、ああ、どうも、全くおどろいたね」
「恐竜を恐《おそ》れていては仕事ができないよ。あんなものは、針金と布片《きれ》と紙とペンキでこしらえあげた造り物と思って向えばいいんだ。しっかりしろよ」
「すまん。全く、すまんよ」
「こうなると、次はもっとすごい場面に出あいたいものだ。おお、隊長どの。この次、恐竜はどこに出ますかね」
監督ケンは、どこまでも人をくった質問をして、伯爵隊長の目を丸くさせる。
「わしが恐竜を飼っているわけではあるまいし、そんなことを知るもんかね。……しかし恐竜がこの島にすんでいることだけはまさに証明された。しからば、今日のうちにも恐竜に再会することができるじゃろう」
そういって伯爵隊長は、吐息《といき》をつき、胸をおさえた。昨日来、伯爵はおどろき又おどろきで、心臓の工合が少々変調をきたしている。
「あの崖をのぼって、恐竜がさっき首を出したところがどんな場所なんだか、調べてみたらどうですか」
ポチをだきしめている玉太郎が、
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