坂になっていた。
ポチはいた。
舳《へさき》の、旗をたてる竿《さお》が立っているが、その下が、甲板よりも、ずっと高くなって、台のようになっている、がその上にポチは、変なかっこうで、海上へむかってほえていた。しかし玉太郎が近づくと、にわかに態度をあらためて、尾をふりながら、上から玉太郎の高くあげた手をなめようとした。しかし台は高く、ポチはそれをなめることができなかった。
「あ、ここにいたね」うしろから声をかけて、ラツール氏が近づいた。
「ほう。そんな高いところへ上って。何をしているんだ」
「海の上を見てほえていたんですが、今おとなしくなりました」
「海の上? 何もいないようだが……」
と、とつぜんポチが台の上におどり上って、いやな声でほえだした。
その直後だった。玉太郎のふんでいた甲板が、ぐらぐらッと地震のようにゆれだしたと思う間もなく、彼は目もくらむようなまぶしい光の中につつまれた。と、ドドドーンとすごい大音響が聞え、甲板がすうーっと盛りあがった。
あ、あぶない! といったつもりだったが、そのあとのことはよくおぼえていなかった。
後から考えるのに、このときモンパパ号は突如《
前へ
次へ
全212ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング