とつじょ》として大爆発を起し、船体は粉砕し、一団の火光になって四方へとびちったのであった。わずか数秒間のすこぶる豪勢《ごうせい》な火の見世物として、附近の魚類をおどろかしたのを最後に、貨物船モンパパ号の形はうせ、空中から落ちくる船体の破片も、漂流《ひょうりゅう》する屍体《したい》も、みんなまっくろな夜空と海にのまれてしまったのである。
 SOSの無電符号《むでんふごう》一つ、うつひまがなかった。だからモンパパ号の遭難《そうなん》に気がついた第三者はいなかった。


   漂流《ひょうりゅう》


 玉太郎は、ふと気がついた。
 ポチの声が聞えるのだ。
「ポチ」と、犬の名をよんだときに、玉太郎はがぶりと潮《しお》をのんだ。息が出来なくなった。夢中で水をかいた。
 海の中にいることがわかった。体がふわりと浮きあがる。
「あ、痛《いた》……」
 頭をごつんとぶっつけた。木片《もくへん》であった。犬がすぐそばで吠《ほ》えつづけた。玉太郎は完全に正気にかえった。
 海の上に漂《ただよ》っていることに気がついた。しかしどうして自分が海中へとびこんだのか、そのわけをさとるまでにはしばらく時間がかかっ
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