郎は、かたずをのんで崖の上に目をすえる。
「ほッ、恐竜がないているぞ。ふん、恐竜は犬みたいな声でなくと見える。………おい、カメラ、ようい!」
ケンは、手をあげて撮影技師のダビットに命令した。
と、崖の上を、右から小さい犬が走り出た。まぎれもなく、それはポチであった。
「あッ、ポチ! ポチだ」
と玉太郎は一生懸命、下から呼ぶ。しかしポチには玉太郎の声が聞えないらしく、崖の上で、うしろをふりかえってほえたてる。
「あれッ。あんなチンピラ犬か」
ケンはがっかりした。が、彼はつづいて、爆発するような声でさけんだ。
「あッ、出た。うしろから恐竜が現われた。カメラ、はじめ。ううッ、すげえ、すげえ。そのチンピラ犬。早く恐竜にとびつけ。そしたら懸賞五百ドルをていするぞ」
ケンは、どなり、さけぶ。
大恐竜が、ほんとに現われたのだ。崖の上、右手から長い首だけをぬーッと出して、じろッと崖下の四人の人間を見た。
くやしい失敗
巨獣恐竜《きょじゅうきょうりゅう》とテリアのポチとでは、相撲にならない。
ぬっと恐竜が首を前へつきだすと、ポチはあわてて尻ごみし、そして崖から足をふみはずし
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