た探検隊員は、それでも助かろうとして、手足をばたばたさせる。どうです、すごいじゃありませんか。団長さん。あんたは、恐竜の口にくわえられて、手足をばたばた動かせますか」
「とんでもないことをいう人だ。わしゃ、かなわんよだ」
「まあ、そのときは、一つ全身の力をふるって、手足を大いにばたばたと、はでに動かして下さいよ。それについて団長とけいやくしましょう。十分映画効果のあるように、はでにばたばたやって下されば、その演技に対して僕は二百五十ドルをあんたにお支払いいたしましょう。どうです、すばらしい金もうけじゃあないですか」
「とんでもない。瀕死《ひんし》の人間が、そんなにはでに手足をばたばたさせられるものか。たとえ、それができるにしても、わしは恐竜にたべられるのは、いやでござるよ」
「ちぇッ。こんないい金もうけをのがすなんて、団長さんも慾《よく》がなさすぎるなあ」
映画監督ケンは、残念そうに舌打をしながら、目を丘の上へやった。
そのときだった。
とつぜん、わんわんと、崖の上で犬がほえだした。玉太郎はおどろいた。ポチであろうか。ポチのようでもあるしポチの声とはちがっているようでもある。玉太
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