いいたまえ。君は昨日の事件で頭がへんになったのにちがいない。あーあ、あわれなる者よ」
「じょうだんでしょう。気がへんになっていては、こんなに見事に仕事の註文《ちゅうもん》をつけられませんよ。僕たちは、この恐竜撮影に成功して、本年の世界映画賞を獲得する確信をもって、やっているんですからね。だから団長さんも、その気になって、僕達に協力してもらいたいですよ」
「ああ、いよいよ、のぼせあがっている。かわいそうに」
「もっと註文をつければ、崖の上のあの丘を舞台にして、右手の方から恐竜を追出してもらいたいですね。そしてでてきたら、恐竜は首をうんと高くのばして入道雲のてっぺんをぺろぺろなめるんです。もちろんそれはかっこだけで、ほんとうに雲のてっぺんをなめなくてもよろしい」
「わしはもう君の相手はごめんだ。わしの方が、頭がへんになる」
「それからこんどは、大恐竜は、おやッという顔をして、長いくびを曲げ、崖の下を見る。そこで崖下にいるわれわれの存在に気がついて、長いくびをのばして、あれよあれよというまに崖の下にいる僕らのうちの誰かの頭にがぶりとかみつき、むしゃむしゃとたべてしまう。大恐竜の口にくわえられ
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