興味をさがしもとめる外なかった。
 ツルガ博士の観測は、いつまでたっても双眼鏡で沼の面をなめまわすだけであったから、しまいにマルタン氏もたいくつして、こっくりこっくり居眠《いねむ》りをはじめた。


   絶好《ぜっこう》の舞台《ぶたい》


 先行組の四人は、この前ラツールがよじ登っていった崖の下に立って、上を見上げていた。
「もしもし、団長さん、早く恐竜を出して下さい。どのへんから出ますか」
 映画監督のケンが、伯爵団長にさいそくをした。
「じょうだんをいってはこまる。恐竜はわしが飼っているのではない」
「夜間撮影はだめなんですよ。昨日のように出られても、こっちはとりようがありませんからね。こんどから太陽の光がかがやいているうちに出して下さい」
「まだそんなことをいう。わしは、恐竜動物園の園長でもないし、また恐竜の親でもないんだからね」
「ロケーションは、このへんがもうし分なしですね。あのそぎたったような崖、たおれた大榕樹《だいようじゅ》、うしろの入道雲《にゅうどうぐも》の群。そうだ、あの丘の上へ恐竜を出しでもらいたいですね。つまり崖の上ですよ。団長さん」
「ああ、なんとでも勝手に
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