彼がこの前にこころみたこの恐竜島の探検のことや、もっと前の、例の水夫ヤンの写生画のことなどについて質問した。セキストン団長は、はじめのうちは元気に語っていたが、そのうちにはげしい暑さと強い湿気《しっけ》にあえぎだし、もう苦しくてしゃべれないから、別のときに語ろうといって、物語をやめてしまった。このとき玉太郎が聞いたのは、前に団長がシー・タイガ号の船長などに語ったのと、だいたい同じ程度のものにすぎず、まだ深く、語るというところまではいかなかった。
「おーい。待ってくれーッ」
「おーい」
 映画班は、ときどきうしろからよんだ。そのたびに、玉太郎と団長と、博士と、娘にマルタンの五人は足をとめて、映画班の追いついてくるのをまたなくてはならなかった。そんなことが、沼のふちへ出るまでに六七回もあった。
 そういうときには、はじめのうちは、伯爵団長がぶつぶついっていたが、あとの方になると、彼はそういうときが救いの時きたるとばかりに足を止め、腰をたたき、汗をぬぐい、身体に吸いついている蚊《か》をたたき殺すのであった。
 ついに沼が見えた。
 この前のとおり、岸をぐるっと右へまわっていった。
 するとこ
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