でも、そうもうろくしてもらってはこまるぜ。問題は、われわれの生命にかかっている。危機一髪《ききいっぱつ》というところで、子供がわあッと泣いたため、恐竜がわれわれのいることに気がついてとびかかって来たらどうするんだ。われわれの生命の安全のために、われわれは幼児の同行に反対する。さあ、団長。はっきり宣言したまえ」
「それはこまる」
「なにイ……」
「まあ、まちたまえ。団長、モレロ君。恐竜島へ上陸したとたんに、せっかくにここまではるばる仲よくやってきた隊員の間で争いがおこるというのはおもしろくない。よく話し合って、協調点をみつけてくださいよ」
「生命の問題は、ぜったいだ。協調なんかして死ぬのはいやだ」
「今さら、隊員の自由をしばるのはいやだ」
「どっちも、もっともです。しからば、こうしたらどうです。ツルガ博士がゆくときは、モレロ君はあとにのこる。次回はモレロ君がゆき、ツルガ博士はあとへ残る。そんならいいでしょう」
 マルタンの調停《ちょうてい》に、モレロはまだ不服でぐずぐずいっていたが、しかしついに説きなだめられ、モレロはやっと承諾した。そして第一回のときにはツルガ博士が出かけ、第二回のとき
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