してしゃべったものだから、少女はびっくりして父のふところに抱きついた。
「ネリちゃん。ぼくといっしょに、ここでお留守をしていましょうか」
 玉太郎は、気の毒になって、そういった。
 するとツルガ博士は、玉太郎のことばにはあいさつも何もしないで、娘の頭髪《かみ》をしずかになで、
「恐竜は、ばかな獣《けだもの》なのです。ちっともこわくありませんよ。ネリはおとうさんといっしょに行くんだから、大丈夫です」
 と、いいきかす。
 伯爵団長は、下唇をつきだして、灰色の頭を左右にふった。詩人張子馬は目を細くひらいて、夢を見ながら微笑しているようだ。
 フランソアとラルサンの二人はしめしあわせて、こそこそ後《あと》じさりをはじめた。この席から姿をかくして、第一回の探検には参加しないですむようにしたい心だった。
「団長。子供は連れていかない、はっきり宣言したまえ」
 モレロは、ほえる。
「まあ、なんだね、各人の自由行動としておこう。強制するのはこのましくない。また、はじめから小さいことで、折角《せっかく》の隊員がにらみあうのはいやだから……」
 団長は、反対のことばをはいた。
「おいおい。いくら老人団長
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