竜島はにぎやかになった。
前夜の危難と恐怖と疲労とで、身も心もへとへとになった探検団員も、朝になると元気をとりもどして、一人また一人とおき出で、肩をならべて沖合に難破しているシー・タイガ号をさしては、昨夜のおそろしい思い出話に時間のすぎていくのもわからないようであった。
タイガ号は恐竜のため船体をまっ二つに割られ、いったん浪にのまれたが、その後また恐竜におもちゃにされてはねとばされたものと見え、船尾《せんび》の方はずっと島の近くの暗礁《あんしょう》の上にのって居り、船首の方はそれから百メートルほどはなれたところに、船首のほんの先っちょと、メイン・マストを波の上に出していた。さんたんたるタイガ号の姿であるが、これを見ても恐竜の力がおそろしく強いことがうかがわれる。
タイガ号の乗組員はどうなったであろうか。かげも姿も見えない。しかしほとんど助かっていないであろう。それに今は下《さ》げ潮《しお》のこととて、附近の漂流物は沖合へ流されているのだ。
「ああ、総督閣下。お早ようございまする」
がらがら声で団長セキストン伯爵があいさつをした相手を見れば、余人《よじん》ならず、玉太郎だった。
前へ
次へ
全212ページ中76ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング