んながいっしょにすがりついて、船橋《ブリッジ》をごろごろころがった」
「そうでしょう。ステアリングどころじゃない」
「すると恐竜は、山のような大波をたてて海の中にもぐった。その波にあおられて、船は一マイルほど沖合へおし流された。それが幸いで、ようやく恐竜にくわれるだけは助かった。というのは、船体はさけてがたがたになっている。浸水《しんすい》がひどくて、手のつけようもない。それから三十分ばかりのうちに沈んでしまった。乗組員は少ないボートに乗れるだけ乗ったが、その夕刻《ゆうこく》の暴風でひっくりかえり、助かったのは、このわしひとりよ」
「これはおどろいた。恐竜がそんなにおそろしいという話を、今までどうしてお話にならなかったのですか。伯爵閣下」
「それはあたり前さ。そんな話をすれば、君たちはここまで船を進ませてくれなかったろうから」
「あ、なるほど」
「だから、恐竜の害をうけないように、夜でなくては、その島へ近づけないのだ」
「それはもっともなことです」
この話からおすと、セキストン伯爵は、再度《さいど》、探険船を用意して、いま恐竜島の附近の海面までのりつけたものらしい。
十名の
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