、おどろいたね」
「ほんとうですか。わしは信じませんね」
「ほら話をいっているんじゃないよ。じっさいに恐竜を見たわしらでなくては、恐竜がどんなに大きいけだものであるか、どんなおそろしいやつか、とても想像がつかないよ」
「へーん。……で、それからどうなりましたか」
「それから……それからがたいへんだ。恐竜は、そこまでやってくると、大きな口をあいた。口の中はまっ赤だ。蛇のように長い舌をぺろぺろと出したかと思うと、いきなり船のマストにかみついた」
「ふーん。それはたいへんだ」
「かみついたと思うと、船がすうーッと上にもちあがった。恐竜の力はおそろしい。じっさいに船をもちあげたんだからね」
「ほう」
「船からは、恐竜にむかってさかんに発砲した。しかし恐竜は平気なものさ。船長はついに大砲を持ちだした。それをどかんとやると、恐竜の首をかすった。恐竜は、はじめておどろいて、へんないやらしい声で泣いた。とたんに、くわえていたマストをはなしたもんだから、こっちの船は五十メートルばかり下の海面へぼちゃんと落ちて、ぐらぐらと来た。あのときばかりは船長以下、舵《かじ》もコンパスも放《ほう》りっぱなしにして、み
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