の電球を、海につけた。海水が穴から中へはいっていく。やがていっぱいとなった。これでいいのだ。穴のところを手でもって、玉太郎は林のところへもどって来た。そしてかたむいた陽の光をこの水入り電球でうけ、その焦点を、そこにちらばる枯草の黒ずんだものの上におとした。
すると枯草はすぐ煙をあげていぶりだした。そこへ息をふきかけた。草は赤い炎をあげてめらめらともえだした。
「あッ。火をつかまえたぞ」
玉太郎は鬼《おに》の首をとったようによろこんだ。やがてこの島に闇《やみ》がおとずれる。
その夜、玉太郎はどんな夢をむすぶことであろうか。
伯爵《はくしゃく》の昔話《むかばなし》
ふかい闇の海上にシー・タイガ号はエンジンをとめた。
正《まさ》に午前一時だった。
乗組んでいる人々の中で、目をさましていない者はひとりもいなかった。みんなはりきった顔でいるが、甲板《かんぱん》へ出ている顔は誰がどんな顔をしているか分らなかった。この一千トンに足りないぼろ船は、団長セキストン伯爵の命令により、完全な灯火管制《とうかかんせい》をしているのだった。
「まちがいなくここなのかね。ねえ船長」
伯
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