、ぎっしりはいっていた。
「ああ、よかった。これだけあれば四五日は食べつなぎができる」
 玉太郎の元気は倍にふえた。たべた。それはかなり大きい角缶《かくかん》であったから、あとはまるでそっくりしているようであった。
 腹が出来ると、ねむくなって、又ねむった。その間に、蚊にくいつかれて目がさめた。太陽が西にかたむいた。やがて夜が来る。
「そうだ。火がほしい」
 火がないと、こういう土地の夜はこわいとかねて聞いていた。
 ところがマッチがない。ライターもない。これでは火なしの生活を送らねばならないのだ。こまった。
 大いにこまりはてていると、ふと気がついたことがある。それは学校で実験をしたときに、ガラス球に水をいれ、それをレンズにして、太陽の光のあたる所へ出し、その焦点《しょうてん》のむすんだところへ、黒い紙をもっていくと、その紙がもえだしたことがあった。
 電球をさっき拾ってあった。それへ目が行ったとき、あの実験のことを思い出したのだ。玉太郎は、電球をにぎって波打ちぎわの方へ行った。そこで石を拾って、注意ぶかく電球の口金のところをかいた。しゅっと音がして、中へ空気がはいっていった。
 そ
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