だったがそれを拾いあつめることが出来た。やがて石垣のあるところまで出た。
 たしかに人の手できずかれた石垣だった。しかしその一部は、こわれていた。そこから水がはいって、内側が入江のようになっている。
 石垣のはずれのところに、カヌーという丸木舟《まるきぶね》が、さかさになってすてられていた。
 どうしてすてられたのか、玉太郎には分らなかったが、これはスコールのときに波がおこって、この丸木舟を石垣越しにうちあげたものであった。
 玉太郎は、そばへ行って、このカヌーをつくづくと見た。外へ出た腕木《うでぎ》が折れていた。それを修理すると、彼は一つ舟をもつことになる。希望が一つふえた。そのあたりで引返すことにして、また元の場所へもどった。
 ポチも帰って来ていなかったし、ラツールの姿も、やはりそこにはなかった。しかたがない。腹がどかんとへった。
 椰子の木の根方《ねかた》をさがして、椰子の実をひろって来て、穴をあけて水をのんだ。それだけではたりない。
 さっき拾った缶詰をナイフでこじあけてみた。すると思いがけなく、ソーダ・クラッカーというビスケットのようなもので、塩味《しおあじ》のつよいものが
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