ルもいなくなった。ポチさえ、どこに行ったかわからなくなった。絶海《ぜっかい》の孤島《ことう》に、自分ひとりがとりのこされている。このままでいれば、ひぼしになるか、病気になるかして、白骨《はっこつ》と化《か》してしまうであろう。玉太郎は心ぼそさにたえきれなくなって、砂の上にたおれた。そして大きな声をあげて泣いた。泣きつかれて、ねむった。
どのくらいねむったかしれないが、ふと目がさめた。脚《あし》のところへ、がさがさと何かがはいりこんで来たので、びっくりして目がさめた。
貝だった。一枚貝だった。
いや、手にとってみると、それは一枚貝を自分の家として住んでいるやどかりだった。
「なあんだ。やどかりか」
やどかりは、玉太郎の手のひらの上で、しばらくじっとしていたが、やがて急に足をだして、あわててはった。そして手のひらからぽとんと下に落ち、草の中にかくれた。
玉太郎は、草の中からそのやどかりをさがしだして、波うちぎわへほうってやった。
「そうだ、ぼくはひとりぼっちではない。この島にはやどかりもいる蠅もいる。蚊もいる。蟻もいる。それに魚もたくさんいる。ひとりぼっちじゃないぞ」
玉太郎は
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