スコールの滝に全身を洗われながらも、斜面のくぼみに足をはめこみ、両手で崖の土のかたいところをひんぱんにつかみなおし、一生けんめいにしがみついていた。
だがスコールのために急に寒冷《かんれい》になり、全身はがたがたふるえて来、手も足も知覚《ちかく》がなくなっていた。
一方玉太郎の方は、崖下にころがり落ち、スコールが作ったにわかの川の中へぼちゃんと尻餅《しりもち》をついた。流れはいがいに強く、彼のからだはおし流されそうになったので、あわてて身を起こした。あたりは、すごい雨あしと水しぶきに、とじこめられ、五六メートルから先は全く見えなかった。
玉太郎は、にわかに出来た流れをあきれながら見ていたが、ふと気がついて、その流れにそって下流《かりゅう》の方へ歩きだした。
五十メートルぐらい歩いたとき、そのにわかに出来た川が、土中にすいこまれているのを見つけた。そこはたくさんの木がたおれて重なりあっているところだったが、にわかの川の水は、その木の下をくぐって土中へ落ちているのだった。
「ははあ、この下に穴があいているんだな。ポチはこの中へはいりこんだのかもしれない」
そう思った玉太郎は、たお
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