思った。
「なぜそんなことが起ったのか。人間がひとりも見えない無人島で、まさか土木工事《どぼくこうじ》が行われようとも思われない。とにかく、もうすこしそこらを見てまわろうじゃないか」
「それがいいですね。きっとどこかに、ポチのもぐりこんだ穴があるにちがいありませんよ」
玉太郎は、すこしも早く愛犬をすくい出してやりたかった。
それから二人は、雑草をかきわけ、つる草をはらいのけ崖の下をまわってみた。むんむんと熱気がたちこめ、全身はねっとりと汗にまみれ、息をするのが苦しい。あえぎながらふらふらする頭をおさえて前進する。こうして二人の気のついたことは、この崖みたいなものは火山でできたものではなく(硫黄《いおう》くさくないから)地震でできたものでもなく、たしかに人間がやった土木工事であることをたしかめた。
しかしその土木工事は、最新式のブルトーザなどという土木機械を使ったものでなくて、原始的な方法、つまり人間を大ぜいあつめて、もっこに土をいれたり石をのせたりしでかつぎあげるといった、方法をとったにちがいないのだ。
それにしてもふしぎなのは、今この島に、だれもいないし、土木工事に使った道具
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