ころがさっきの地震は、そうでなかったですね。どの地震も同じくらいの強さの地震だったでしょう。だからへんだと思ったんです」
 玉太郎は、地震が名物の日本に、いく年かを暮したことがあって、地震の常識をしっていた。
「ふーン。どうかねえ」
 ラツールは首を左右にふった。彼には、わからなかった。
 そのとき二人の注意を急にうばったものがあった。ポチのわんわんとほえる声だった。
 それは遠くの方であった。二人は顔を見あわせた。
「ポチは、あやしいものを見つけて、ほえているんですよ」
「そうらしい。この沼の向うがわだ。そして地面の下でほえているように思う」
「ラツールさん。ぼくはこれから沼のむこうへ行って、ポチを早く助けだしてやりたいです」
「行くかね。きみが行くなら、わたしも行く。しかし玉ちゃん。すこしのことにも深く注意して、すこしずつ前進するんだね。もしもこの島が恐竜島だったら、われわれはすぐさまこの島をあとにしてのがれなければならないんだ。命の危険、いやそれいじょうのおそろしいことが恐竜島にはあるんだ」
 勇敢で沈着なラツール記者も、恐竜島と地震の話になると、人がかわったように身ぶるいするの
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