まった。その早さったらなかった。電光石火《でんこうせっか》のごとしというたとえがあるが、まさにそれであった。
それのあとに新しい波紋がひろがり、それからじんじんゆさゆさと、次の地震が起ったのであった。
いったい沼のまん中で浮き沈みした赤黒い島みたいなものは、何であったろうか。
玉太郎もラツールも、目をつぶってだきあっていたから、この重大なる沼の怪事《かいじ》をついに見落としてしまった。このことは二人にとって大損失《だいそんしつ》だった。
地震がもう起らなくなったので、二人はようやく手をといて、立ち上った。
「いやなところだね。赤道《せきどう》の附近には火山脈《かざんみゃく》が通っているんだが、この島もその一つなのかなあ」
ラツールは首をひねった。
「しかしラツールさん。地震にしては、へんなところがありますねえ」
玉太郎がいった。
「へんなところがあるって。なぜ?」
「だって地震は、たいてい一回でおしまいになるでしょう。何回もつづく場合は、はじめの地震がよほど大きい地震でそのあとにつづいて起る余震《よしん》は、どれもみなくらべものにならないほどずっと小さい地震なんでしょう。と
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