けか、ポチは姿をあらわさなかった。玉太郎は、モンパパ号の上でも、椿事《ちんじ》の前にポチの姿が見えなくなったことを思い出して、不安な気持におそわれた。
密林《みつりん》の奥《おく》
「また。ポチがいなくなったって。なあに、だいじょうぶ。硝石《しょうせき》なんか積んでいたモンパパ号とちがって、これは島なんだから、爆発する心配なんか、ありゃしないよ」
ラツールは、なまぐさいおくびをはきながら、そういって、空《から》になった椰子の実を足もとにどすんとすてた。
なるほど、そうであろう。しかしこの広くない島にしろポチは何にひかれて単身《たんしん》もぐりこんでしまったのであろうか。
「さあ、そこで第三の仕事にうつろう」
「こんどは何をするんですか」
「火がなくて、沖合《おきあい》へのろしもあげられないとなれば、いやでもとうぶんこの島にこもっている外ない。そうなれば食事のことを考えなければならない。何か空腹《くうふく》をみたすような果物かなんかをさがしに行こう」
「ああ、それはさんせいです」
「多分この密林の中へはいって行けば、バナナかパパイアの木が見つかるだろう」
「ラツールさん
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