ながらロープを手許《てもと》へたぐった。
「やあ、ごきげんいかがですな、玉太郎の王子さま」
という声に、おどろいて顔をあげると、もうそのときには、手のとどきそうなところにラツールの筏が近づいていた。玉太郎はロープといっしょに、ラツール氏の筏をどんどん引張っていたわけだ。
ラツールは、愉快そうに笑った。そして筏をどしんとつけた。
二人は手をにぎりあって喜んだ。
が、このままでは、ゆっくり手をにぎりあっていることも許されない。
「早いところ、筏は一つに組みなおすことが必要だ」
「やりましょう」
玉太郎は、腹のすいていることも、のどのかわいていることも忘れて、ラツール氏と共に筏の組みなおしをやった。
ラツールの方は、いろんな木を集めていた。また箱をいくつか持っていた。本もののカンバスもあった。どこにさがっていたものか、紅《あか》のカーテンの焼けこげだらけの布もあった。これらのものをラツールはみんな海からひろいあげたのだといった。彼は、ロープの先に、鍵のように曲った金具をむすびつけ、それを漂流物に投げつけては、手もとへひきよせたのだという。
「なんか食べものは漂流していなかったかし
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