だろう」
 彼はラツールさんに同情をして、その筏の方を見た。
「おや、ラツールさんも、かげをこしらえたよ。ふーン、あの筏は、だいぶんこっちへ近くなって来たが……」
 ラツールの筏の上には、白い布《きれ》が柱の上に張られた。それは帆として働いている。ラツールのところには、なかなか布があるらしい。見ているうちに、また新しい帆が一つ張られた。
 それがすむと、ラツールは、筏の上から、しきりに手まねをして、こっちへ何かを通信しはじめた。
 それは何事だか分らなかったが、いくどもくりかえしているうちに、意味がわかりかけた。
“おーい、元気を出せ。僕はこの帆を使って、この筏を、そっちへよせる考えだ”
 ありがたい。二人とも別々に海流の上にのって、どこまでも別れ別れに流されていく外ないのかと思っていたのにラツールの努力によって、二人は筏を一つに合わせることができそうだ。ああ、ありがたい。
 玉太郎は、ラツールにお礼の意味でもって、それからしばらくポチにほえさせた。
 ラツール氏は手をふって喜んでいる。


   筏《いかだ》の補強《ほきょう》


 ラツール氏の筏は、どんどん近づいた。
 氏はヨット
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