る扉の蝶番《ちょうつがい》のあるところは、もとネジで柱にとめてあった。その柱が木ネジといっしょに扉の方へひきむしられて、ひんまがったまま水中につかつているのだった。
 これが大きな柱だったり、鉄材に木ネジでとめてあるのだったりすれは、木ネジの方が折れてはなれてしまったことであろうが、その船は、ちゃちな艤装《ぎそう》のために、鉄材と扉の間にすきが出来、厚さ三四センチのうすい板の柱のように間につめこんであったのだ。だからこの板は、扉といっしょにはなれるのだ。
 玉太郎は、水中に手を入れ、この板柱をはずして筏の上にあげた。長さは二メートルはある。手頃《てごろ》の柱だ。
 こうして材料はそろった。
 玉太郎は、これらのものを使って、筏のまん中に、板の帆をもった柱をたてた。涼《すず》しいかげができた。
「ポチもここへこい。ああ、ここにおれば楽だ」
 玉太郎は、かげにはいって、生きかえったように思った。
 書けば、これだけのかんたんな仕事であったが、これだけのことに、たっぷり二時間もかかった。
 涼しくはなったが、いよいよ腹はへってきて、やり切れない。のどもかわく。
「ラツールさんも困っていること
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