望した。
 どこまで、海流がこの二組を同じ方向へ流してくれるか安心はならなかった。
 三百六十度、どこを見まわしても海と空と積乱雲《せきらんうん》の群像《ぐんぞう》ばかりで、船影《ふなかげ》はおろか、島影一つ見えない。
 熱帯の太陽は積乱雲の上をぬけると、にわかにじりじりと暑さをくわえて肌を焼きつける。ふしぎに生命をひろって一夜は明けはなれたが、これから先、いつまでつづく命やら。玉太郎は水筒《すいとう》一つ、缶詰一つもちあわせていない。前途を考えると。暗澹《あんたん》たるものであった。


   熱帯の太陽


 腹もへった。
 のどもかわいて、からからだ。
 だが、それよりも、もっとこらえ切れないのは暑さだ。
「かげがほしいね。何かかげをつくるようなものはないかしら」
 玉太郎は、自分のまわりを見まわした。
 もちろん帆布《ほぎれ》もない。板片《いたぎれ》もない。
 だが、なんとかしてかげをつくりたい。どうすればいいだろうかと、玉太郎は一生けんめいに考えた。
 そのうちに、彼は一つの工夫を考えついた。それは、今|筏《いかだ》にしている扉の一部に、うすい板を使っているところがある。それ
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