船《かいせん》と怪人《かいじん》


 穴は人一人がやっとぬけられるような小さい穴だった。一人ずつ、身体を横にしてはって行かねばならない。まずケンがとびこんだ。つづいて玉太郎、それにダビット、しんがりは張だ。
 前の人の足を左手でおさえながら、右手ですすむのだから、大へんな骨折りだった。
 しかし、この努力の彼方には救われるという希望があったので、これ位の苦しみは、四人にはなんでもなかった。
 しばらくすると、四人のほおに冷い風がふいて来る。風というよりも空気の流れだ。その流れの中に、かすかではあるが、例の恐竜のなまぐさい香りがまじっているのだ。したがって、この穴の出口に恐竜がいるのかも知れない。あるいは恐竜の巣につながっているのであろう。そうした危険はたぶんにあるのだ。しかしそんなことを心配してはいられない。出たとこ勝負でぶつかってゆくより今の四人には手のほどこしようがないのだった。
 水中に張ってある綱は生命の綱ともいうべきであった。綱を引く事によって水からの恐怖がまずさり、次にこうした脱出穴《だっしゅつあな》をさがし出せたのだ。しかし、それよりももっと大きな幸福が、四人ばかりでな
前へ 次へ
全212ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング