して、それにかわって怒号《どこう》が聞えた。
 と、頭の上が、急に暗くなったように思った。はてなと、その方を見ると、太い丸木橋みたいなものが、二つ岩の上にかかり、前後に大きくゆれていた。その橋は、急にふくれたり、筋ばったりした。丸木橋でなく、それが恐竜のくびであることに、間もなく気がついた。三頭だか四頭だかの恐竜が、彼の方へ向って攻撃をくわえているのだ。
「ばかな奴だ。誰だかしらんが、とうとう恐竜どもを怒らせてしまったんだ」
 ケンは恐怖にみちた目で、玉太郎たちを見まわした。ダビットは、カメラを上へむけて撮影に夢中であった。
「天につばをはくようなものだ。彼らは深刻にさとった頃だろう」
 張はおちつきはらって、そういった。それがモレロたちの仕業《しわざ》であることを、張はすぐさとったようだ。
「ケンさん。恐竜は元来おとなしい動物じゃないんですか。人間をたべたりしないのでしょう」
 玉太郎は、ケンにたずねた。
「あの巨獣《きょじゅう》は、おとなしいだけに、いったん怒らせると、ものすごくあばれるんだ。これはぐずぐずしていると、とばっちりが、こっちへまわってくるぞ。おう、みんな。今のうちに安
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