《くうひ》して、何の収穫《しゅうかく》もなかった。そのとき彼らは、ロープで下りてきたところの岩根をかなり前方へまがって、恐竜のわだかまっている地点まで、あと三四メートルのところに来ていた。巨大なる体躯《たいく》をもった恐竜としては、一とびか二とびでとんで来られるところだった。しかし四人は、そのことについて正確には気がついていなかった。というわけは、彼らと恐竜の間には、将棋《しょうぎ》の駒《こま》のような岩があって、恐竜どもの姿を、彼らからかくしていたのだ。
ところが、玉太郎たちは、にわかにこの恐竜どもの姿を、頭上《ずじょう》に仰《あお》ぐようなことになった。
そのきっかけは、崖の中腹あたりかで、とつぜん轟然《ごうぜん》たる銃声がなりひびき、つづいて、だーン、だだーンと、めった撃ちに射撃がはじまった。
「おやッ。何が起ったのだろう」
「誰だい、ぶっぱなしたのは……」
ケンもダビットも玉太郎も、顔色をかえて、銃声のした方向をあおいだ。しかし屏風《びょうぶ》のようにそそり立った岩がじゃまになって、発砲者《はっぽうしゃ》の姿は見えなかったが、誰とて分らないが、おそろしい悲鳴がつづけざまに
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