にすがって早く崖の下へ下りて行きねえ」
「よし来た。いや、まてよ……」
「さあ、早く下りねえ。蟇口《がまぐち》なんか、とちゅうでなくすといけないから、おれに預けて行きねえ」
「こいつめ。おれが早合点するのをいいことにして、うまくごまかして、先へ恐竜のところへやろうとしやがったな。なんという友情のない野郎だ。フランス水夫の面よごしめ。たたきのめしてやる」
「何を、とんちきめ」
フランソアがつかみかかると、ラルサンも負けてはいなかった。はげしい組打《くみうち》がはじまろうとした寸前《すんぜん》。
「おい、しずまれ。二人とも、けんかはやめて、うしろへ引け。いうことをきかねえと、心臓のまん中へピストルの弾丸をごちそうするぞ」
と、雷のような声がひびいた。モレロの大喝《だいかつ》だった。
とつぜんの銃声《じゅうせい》
二人の水夫は、ちぢみあがった。
モレロと来たら、手の早いらんぼう者であることを、これまでのつきあいで、よく知っていた。ピストルの引金をひくことなんか、つばをはくほどにも思っていない悪党だ。おとなしくしないわけにはいかない。
「お前たちに話がある。耳よりな、もう
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