ななさけない姿になってしまったのかと思った。
ケンが追いついてきて、そのされこうべを手にとってみて、これは伯爵のものではないと断定《だんてい》した。
「見たまえ、波にあらわれて、骨が丸くなっているとこがある。よほど古いされこうべだ。伯爵のでないから、悲しまないでいいよ」
そういわれて少年は、胸をおさえて、にっこり笑った。
「じゃあ、誰の頭なんでしょうね」
「さあ、誰かなあ。とにかくこの恐竜の洞窟には、永い興味がある歴史があるんだね」
しばらく行くと、一行は、岩根に、おびただしい人骨《じんこつ》を発見した。
「やあ、これはたいへんだ」
「いやだね、ぼくたちはこんな風になりたくない」
一行四人は、その前に立ったまま足がすくんでしまった思いだった。
慾《よく》ふかども
恐竜の洞窟の断崖での上では、モレロがひじょうに昂奮している。彼のすごみのある顔が、一そうけわしくなり、頬はひっきりなしにけいれんし、眉はぴくぴくと上ったり下ったり。そして急に歩きだしたり、また急に足をとめたり、落ちつきがない。しかもその間に彼は、海面に眠る恐竜の群から目をはなさない。
「ふーン。畜生め」
前へ
次へ
全212ページ中134ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング