そいで岩根にくくりはじめた。


   伯爵《はくしゃく》の行方《ゆくえ》


 ロープが張られて、ラツールはダビットに助けられ、上へ引上げられた。
「おお、玉ちゃん」
 ラツールは玉太郎にだきついた。
「よかったねえ、ラツールさん」
「ありがとう。君は三度もぼくの生命をすくってくれた」
 二人はうれし涙にくれて、いつまでも抱きあっていた。
 その間に、救援隊の四人はロープをつたわって、崖の中段におりた。
「ははあ、あれだな。ぴかぴか光っていらあ」
「ほんとに、あれは金貨らしい光だ」
 フランソアとラルサンが、小さい暗礁の上に光るものを見つけて、感心している。
 張は、無言《むごん》だ。
 モレロは、うなりつづけた。そして口の中で、ぶつぶつなにかいっている。
「……それで分った。あの伯爵め、恐竜以外に、何かもうけ仕事のこんたんがあると、にらんでいたんだが……まさか、これほど大きいものとは思わなかった。……どう見ても、海賊の残していった金貨の大箱が五つも六つもあるようす……時価になおすと、どえらい金高になるぞ。……恐竜を生捕《いけど》ることはやめて、これはどうしても、あの金貨をねらわにゃ
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