の、大きなテーブルには、――テーブルといってもやはり空箱を四つばかりならべて、その上に布《きれ》をかぶせてあるものだが――巨漢《きょかん》モレロが、山賊の親方のように肩と肘《ひじ》とをはり、前に酒びんを林のようにならべて、足のある大きなさかずきで、がぶりがぶりとやっていた。彼の眼《ま》ぶたは下って、目をとじさせているようだったが、ときどきびくっと目をあいて、すごい目付で、あたりを見まわす。
「……おれが許すんだ。今日はのめ。……うんとのめ……文句をいう奴があったら、おれが手をのばして、首をぬいてやる。なあ、黄いろい先生」
黄いろい先生といってモレロが首をまわした方向に、張子馬がしずかにテーブルについていたが、玉太郎とマルタンが、青い顔をしてかけこんで来たのを見ると、彼はさかずきをそっと下においてたち上った。そしてモレロの頭ごしに、玉太郎たちに声をかけた。
「なにか一大事件がおこったようですな。何事がおこりましたか」
感情をすこしもあらわさないで、中国の詩人は、しずかにたずねた。
「たいへんです。恐竜の洞窟の中で、みんなが遭難《そうなん》してしまったんです」
「ロープが切れて、みんな
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