崖《がけ》の中段のところに、おきざりになってしまったんだそうだ。すぐみなさん、救援にいって下さい」
「それは大事件ですね。ロープだけでいいのでしょうか」
張は、冷静にたずねた。
「ロープと食糧とあかりと……それから薬がいる」と玉太郎がいった。
「ロープはいちばん大事なものだ。たくさん持っていく必要がある。そして早くだ」
マルタンは、何が大切だか、よく心えていた。
張子馬はうなずいた。そして水夫のところへ行って、
「おい、フランソア。ラルサン。もう酒もりは、おしまいだ。こんどはお前たち、出来るだけインチのロープを肩にかついで、あの密林の奥へ急行するんだ。分ったか、フランソアにラルサン」
と、二人の肩を、いくどもたたいた。
二人とも、首をぐらぐらしているだけで、張のいっていることが半分しか分らない面持《おももち》であった。
「やい、やい、やい、やい……」
モレロが仁王《におう》のように立ち上った。
「おれをのけものにして、何をどうしようというんだ」
慾《よく》の皮《かわ》
玉太郎もマルタンも、気が気ではなかったが、救援隊はそれから一時間のちになって、出発した。
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