で協議を始めた。その間、ケンとダビットは煙草に火をつけ、相談しながら、ものめずらしげに下をじろじろと見まわしていた。
「おや、あれはなんだ。あの岩の上に、ぴかぴか光っているものがある」
 ケン監督がゆびさした。それは、さっき恐竜がはいあがっていた平らな一つの岩の上であった。
「洞窟の宝もの。金貨にダイヤモンドに、その他いろいろの高価な宝石……じゃないかな」
 ダビットは、おどけた調子でそういった。彼はじょうだんをいったのである。
「はり倒すぜ。お伽噺《とぎばなし》じゃあるまいし。さあお伽噺より現実の方がだいじだ。君はこのラツール君を背中にしばってこのロープをつたわってあがれるかい」
「オー・ケー。大いに自信がある」
 ケンはぐにゃぐにゃのラツールをダビットの背にしばりつけた。ダビットは上から下っているロープへぶら下った。そしてぐうっと胸をちぢめてロープをのぼりはじめた。
 そのとき、崖の上で、気がへんになったような人の声がした。玉太郎の声だ。
 ケンは上をあおぎ見た。
「あッ、伯爵、なにをするんです。早くのいて下さい」
 セキストン伯爵が、どういうつもりか、下へたれているロープをつたわ
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