たから、すぐこの人命救助にのりだした。玉太郎はうれしくて、胸がいっぱいになった。
「これでまに合うかな」
「大丈夫、あそこまでとどきますよ」
「とどくことは分っているが、このロープはすこし古いからね。切れやしないかと思う」
「大丈夫でしょう、こんなに太いんだから」
ケン監督は、大胆《だいたん》の中にもこまかい注意をはらう男だった。ロープは、撮影のときカメラマンのダビットをつりさげたりするために、とちゅうで手に入れたものだったが、すこし古びていた。一人の身体をささえるにはだいじょうぶだろうが、救助作業のときは二人いっしょにこのロープへぶら下る場合が予想されるので、そのときのことをケンは心配したのだ。
ダビットの方は、そんなことを気にもとめていなかった。
「ダビット。君が先へおりてくれ」
「よろしい」
ダビットはすぐロープを自分の腰にぐるぐるとむすびつけた。ケンはロープの他のはしをにぎって、伯爵と玉太郎に、それをしっかりにぎってうしろへ下がり、腰をおとすように命じた。
ケンは岩鼻のところに立ち、ダビットが岩をこえてそろそろ下へおりていくのをちゅうい深く手つだった。ダビットは、こうい
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