岩壁《いわかべ》であり、そしてやはりひたひたと海水に洗われていた。
「おや、あそこの岩に、人が倒れている」
玉太郎は、重大なることを発見した。その岩壁はまん中あたりでちょっと段になっていたが、その段の上に、誰か倒れているのであった。
「あ、ラツールさんだ。ラツールのおじさんだ。みんな来て下さい」
玉太郎は昂奮した。下をさしながら、彼はどなった。その声は、わんわんと大きく洞窟をゆすぶってひびきわたった。四頭の恐竜が、鎌首《かまくび》をもたげて、じろりと、こっちを見た。
冒険|救助作業《きゅうじょさぎょう》
撮影監督のケンもカメラマンのダビットも、撮影ちゅうししてそばへとんできた。
「あそこです。崖のとちゅうに人間がかかっているでしょう。あれがラツール記者なんです。やっとラツールさんのいどころが分りました。早く救って下さい。なんとかして生命をたすけてあげて下さい」
玉太郎は泣かんばかりに熱心を面《おもて》にあらわして、ケンやダビットにたのんだ。きょとんとしている老伯爵にもたのんだ。
「よし。ロープを下してたすけよう」
ケンもダビットも、義侠心《ぎきょうしん》が強かっ
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