ある。
 だが、下へ下りるほど、空気は冷《ひ》え冷《び》えとして、この島のどこよりも暑さがしのぎよかった。
 旧火山跡《きゅうかざんあと》にはちがいないが、かなり古い火口らしい。
 やがて火口底《かこうてい》らしいものが見えた。
 この穴は、まっすぐにはいっていないで、直径が大きくなりだしたあたりから、やや横にはい出して、大きなトンネルのようになっていた。だから別にロープをぶら下げて伝い下りをしないでも、火口底へ下りることができた。
 あたりは急にうす暗くなった。
 穴の奥はまっくらで、いよいよ気味がわるい。四本の探検灯が、ぶっちがう。それが不安を大きくする。
「いよいよ、この奥に恐竜夫人が寝こんでいらっしゃるだろうが、みんなよういはいいかね」
 いつの間にかリーダーとなった監督ケンが一同をふりかえる。
「オー、ケー」
「注意しとくが、ピストルも銃も、いよいよというときでないと撃たないことだね。恐竜をびっくりさせることは、できるだけよしたがいいからね」
「よし、わかった」
 伯爵隊長の注意は、すなおに聞きいれられた。そして一行は、冷え冷えとした土の壁にからだをこすりつけるようにして、前
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