かいっているものの、万里《ばんり》の波濤《はとう》をのりこえて恐竜探検にここまでやってきた一行のことであるから、一刻《いっこく》も早く恐竜にはっきり面会したくてたまらない人々ばかりだった。
「おや、こんなものがひっかかっているぞ。カーキー色の上衣《うわぎ》の袖《そで》らしい」
 監督ケンが、岩と倒れた木の間を抜けようとしたときに、木の枝に、それがひっかかっているのを見つけたのだ。
 玉太郎は、それを聞くと、ぎくりとした。すぐさま彼はケンのそばへすべりおりていって、それを見た。
「あ、これはラツールおじさんの服だ」
 袖のところに、ペンとフランスの三色旗を組合わせたぬいとりがあったから、それはうたがう余地がなかった。
「ラツールおじさんは、やっぱりここを下へ下りていったんだな」
 下りていって、それからどうしたのであろう。その消息は不明であるが、玉太郎は安否《あんぴ》を知りたい人のあとについて今おいかけていることはまちがいないと知り、元気をくわえたのであった。


   恐《おそ》ろしい発見


 下へゆくほど穴の直径《ちょっけい》は大きくなった。
 たしかに噴火孔《ふんかこう》のあとで
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