。ここはパチノの墓穴なのだ。この深夜《しんや》、一体何ごとが起ったというのであろう。ジュリアを責《せ》める男は誰人《だれ》? そして地底に現われた吸血鬼は、そも何処に潜《ひそ》める?
生か死か、覆面探偵
帝都の暗黒界からは鬼神《きしん》のように恐れられている警視庁の大江山捜査課長は、その朝ひさかたぶりの快《こころよ》い目覚《めざ》めを迎《むか》えた。それは昨夜《ゆうべ》の静かな雨のせいだった。それとも痣蟹仙斎が空中葬《くうちゅうそう》になって既に四日を経《へ》、それで吸血鬼事件も片づくかと安心したせいだったかもしれない。――課長は寝衣《ねまき》のまま、縁側《えんがわ》に立ち出でた。
「――手を腰に膝を半ば曲げイ、足の運動から、用意――始めッ!」
ラジオが叫ぶ一《イチ》イ二《ニ》イ三《サン》ンの号令に合わせて、課長は巨体をブンブンと振って、ラジオ体操を始めた。彼は何とはなしに、子供のような楽しさと嬉しさとが肚《はら》の底からこみあげて来るのを感じた。
「よしッ! この元気でもって、帝都市民の生活を脅《おびや》かすあらゆる悪漢どもを一掃《いっそう》してやろう」
課長はそ
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