の声だろう。
 光芒の中に、一本の腕がヌッと出てきた。それは屍体の覆面の方に伸び、黒い布を握った。ずるずると覆面は剥《は》がれていった。そして果然《かぜん》その下から生色を失った一つの顔が出て来た。ああ、その顔、その顔、蝋《ろう》のようなその顔の、その頬には醜《みにく》い蟹の形をした痣《あざ》が……
「おお、これは痣蟹仙斎《あぎがにせんさい》……」
 なんということだ。覆面探偵というのは、痣蟹仙斎だったのか。しかし不思議だ。そんなことが有り得るだろうか。だがここに無惨なる最期《さいご》を遂《と》げているのは、正に兇賊《きょうぞく》痣蟹に違いなかった。
「貴女《あなた》は失踪中のポントスのことを云うが、しかし誰でも貴女の釈明を要求しますよ」
 と懐中電灯の男はいう。どっかで聞いた声音《こわね》である。
「いいえ、あたしは犯人じゃありません。このジュリアは貴方の電話でうまく此処《ここ》へ誘《さそ》いだされたのです。陥穽《わな》です、恐ろしい陥穽なんです。ああ、あたし……」
 と、よよと泣き崩れる声は、意外にも今を時めく、龍宮劇場のプリ・マドンナ、赤星ジュリアに違いなかった。
 それで解った
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