こなかった。恐ろしい静寂《せいじゃく》、恐ろしい地底の一刻!
 そのとき、どこかで微かに口笛の音がしたと思った。それは気のせいだったかも知れないと人は疑《うたが》ったろう。しかしそれは確かに口笛に違いなかった。次第に明瞭《めいりょう》になる旋律《メロディ》。ああそれは赤星ジュリアの得意な「赤い苺の実」の旋律――しかしこの場合、なんという恐ろしい口笛であったろう。暗い壁が魔物のように、かの怪しい旋律を伴奏した。……と、突如――まったく突如として、魂切《たまぎ》るような悲鳴が地底から響いて来た。
「きゃーッ、う、う、う……」
 しかし、それきりだった。悲鳴は一度きりで、再び聞えてこなかった。
 戦慄《せんりつ》すべき惨劇が、その地底で行われたのだった。その現場《げんじょう》へ行ってみよう。
 これはまた何という無惨なことだ。――そこはもう行《ゆ》き止《どま》りらしい地底の小室《こべや》だった。一人の男が、虚空《こくう》をつかんでのけ反《ぞ》るように斃《たお》れている。その傍には大きな箱が抛《ほう》り出してある。蓋を明け放しだ。中から白いものがチラと覗いているが、よく見れば気味の悪い骸骨《が
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